こんにちは。駒沢大学駅前の買取専門店『ゴールドパーチェス』です。
立秋とは名ばかりの猛暑が続いていますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?
当店は、暑さに負けず、お盆休み明けからも元気に営業しております。
さて、本日は骨董品の中でも東北(主に福島)地方で生活に溶け込み、長らく愛されている
「相馬焼」についてご紹介させていただきます。

相馬焼の発祥
相馬焼は、福島県双葉郡浪江町の大堀地区で生産されてきた焼き物の総称で、国の伝統的工芸品にも指定されている江戸時代の元禄年間から300年以上の歴史を誇る町を代表する特産品です。
※旧藩政時代には「相馬焼」と呼ばれていましたが、国の伝統的工芸品指定を受けてからは、産地である 「大堀」の名を入れた「大堀相馬焼」と呼ばれています。
半谷休閑という人が、その下僕である左馬(さま)の製陶技術を見込み、地元でとれた陶土を原料に茶碗をつくり、これに駒絵を描いて売り出したのが相馬焼の発祥と言われます。
もともとこの地域は陶土に恵まれており、相馬藩の保護のもとで窯業が栄え、やがて「相馬駒焼」とも呼ばれる独自の様式が確立されていきました。
相馬焼は日常の生活用品として広く用いられた一方で、藩の威光を示す献上品としても重視され、地域の文化と経済を支える存在でもありました。

相馬焼の特徴
相馬焼の最大の特色は、大きく三つにまとめることができます。
1.駒絵(こまえ)
相馬焼の器には、勇壮に駆ける馬の絵が描かれることが多く、これが「駒絵」と呼ばれます。相馬藩は馬の産地として知られ、とりわけ「相馬野馬追」という勇壮な伝統行事と深く関わっています。
馬は藩の象徴であり、また人々の生活や信仰とも密接に結びついていたため、器の装飾として描かれることにより、郷土色豊かな陶磁器としての個性が生まれ、熟練の筆使いで描かれた「走り駒」の躍動する姿は、昔から縁起が良いものとされてきました。
駒絵は単なる装飾にとどまらず、相馬焼を手にする人々にとって故郷の誇りや精神性を映す存在でもあったのです。
2.青ひび(あおひび)
相馬焼を特徴づけるもう一つの要素が「青ひび」と呼ばれる貫入(かんにゅう)です。
これは釉薬と素地の収縮率の違いから生じる細かなひび模様であり、青みがかった美しい網目状の文様を生み出します。
このひびが入るときに出る「貫入音」は、 「うつくしまの音 30景」にも選ばれた繊細で美しい音です。
偶然の産物でありながらも、器に独特の味わいと深みを与え、使用するにつれてさらに風合いを増していきます。
ひび割れを美と捉える日本人の美意識とも共鳴し、茶道具や酒器としても高い評価を受けてきました。
3.二重焼(にじゅうやき)
相馬焼を語る上で欠かせないのが、実用性を兼ね備えた「二重焼」の技法です。
器の内側と外側が二層構造になっており、熱い飲み物を入れても手に伝わる熱が和らぐ工夫が施されています。
冬の寒さが厳しい東北地方において、この構造は生活の知恵として重宝されました。
また、昭和20年代末には、アメリカへの輸出ブームが到来。二重構造の相馬焼は「アイデアカップ」、「ダブルカップ」という名称で人気を博しました。
現在でも湯飲みや徳利などにこの技法が用いられており、相馬焼の代名詞とも言える存在です。

震災、復興に向けて
相馬焼の歴史には困難な時代もありました。
2,011年の東日本大震災では、福島県の浜通り地域が甚大な被害を受け、多くの窯元が操業不能に追い込まれました。
原発事故の影響により避難を余儀なくされた職人も少なくなく、相馬焼の存続が危ぶまれる状況となったのです。
しかし翌年、大堀から60キロ離れた二本松市の協力を得て、二本松市内に仮設の工房兼事務所を開設しました。
窯元たちは諦めず、新たな土地で窯を築き直し、相馬焼の伝統を守り続けています。
震災後は「復興のシンボル」として注目を集め、福島の工芸品の代表格として全国各地で展示や販売が行われました。
現在では約半数が福島県内の新天地で再開を果たしています。浪江町が誇るこの伝統工芸は困難に耐えてなお、生き続けているのです。
こうした取り組みを通じて、相馬焼は「困難に立ち向かう力強さ」を象徴する存在ともなったのです。
現在の相馬焼
現在の相馬焼は、伝統を守りながらも新たな挑戦を続けています。
従来の駒絵や青ひびを活かした器に加え、現代的なデザインや色彩を取り入れた作品も多く制作されています。
若手陶芸家たちは、コーヒーカップやタンブラーなど現代のライフスタイルに合った器を生み出し、相馬焼の魅力を次世代へと広げています。
また、海外での評価も高まっており、日本の伝統工芸としてだけでなく、世界に誇れるアート作品として上海、パリ、サンフランシスコ、ハワイなど海外の展示会へ出展し、紹介される機会も増えています。
実用性、美術性、そして郷土性を兼ね備えた相馬焼は、国境を越えて多くの人々に感動を与えています。
さて、本日は「相馬焼」についてご紹介してまいりました。
いかがでしたでしょうか。相馬焼に限らず陶磁器等の作品には、作者の想いや日常的に愛用していたり、コレクションしていた方々の想いも重なっているものです。
当店では、そういったお客様の大切なお品を一点一点丁寧に査定させていただきます。
お持ちの物の価値を知りたい等ございましたら、ぜひお気軽にお立ち寄りください。
スタッフ一同心よりお待ちしております。